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胆嚢粘液嚢腫

いつもご訪問ありがとうございます。
先週は重症疾患症例が立て続けになり、大変でしたが、全頭、無事に退院してくれまして、ほっとしています。
さて、その症例の中で外科をおこなった胆嚢粘液嚢腫の症例。
食欲が無く、元気がないことを主訴に来院された症例でした。
各種検査で胆嚢粘液嚢腫からの胆のう炎、腹膜炎を疑い、OPEを行いました。
胆嚢疾患などでは術中血圧がかなり低下することもあるのですが、動脈内にトランスデューサーを留置し、血圧を監視しながら、薬剤などを適宜使用したことで、術中の血行動態は安定しており、無事、手術を終了することが出来ました。
ただ、胆嚢は所々に壊死巣が認められており、あと少しで破裂するところでした。

術後経過は順調にて、食欲も改善したため、退院。ご家族の皆さんでお出迎えになり、当初は暗かった飼い主様の顔に笑顔が出てきたのは嬉しかったですね。


フィラリア予防について

いつもご訪問ありがとうございます。
さて、フィラリアの予防シーズン到来ですね。
そんな中、毎年、数件ではございますが、フィラリア予防時のフィラリアの感染の有無をみる血液検査のご質問をいただきます。先日もそういったご質問をいただきましたので、ここに回答をしたいと思います。まず、フィラリアの検査に関してですが、【安全に】フィラリア予防薬を飲んでいただくためには毎年飲ませはじめの時期にチェックが必ず必要になります。
理由としては、フィラリア薬というのは基本飲み薬になります。最近は注射薬もありますが、飲み薬の際は①投薬日にきちんと飲んでいなかったり、②体調が悪いときに飲んでしまい、下痢や嘔吐などで十分に薬が吸収されてなかったり、また、注射薬の場合には体重の変動があったりなどの理由から、予防を行っていたとしても予防がきちんと出来てなかったケースが考えられます。しかも、フィラリア予防薬というのはフィラリアになっていない犬が飲む薬であり、フィラリアになってしまっている犬が知らずに飲むと血液中のミクロフィラリアというフィラリアの仔虫(成虫は肺動脈内に主に寄生)が一気に死滅し、塞栓症などを起こし亡くなる危険性があります。そういった性質の薬なので【要指示医薬品】に指定され、添付書類にも下記のような記載があります。

ただし、ミクロフィラリアの検出の感度は比較的低いため、当院では感度の良い抗原検査キットを用いて検査を行っています。
予防で万が一の状態にならないため行う大切な検査であり、獣医師としては処方に関して責務のある要指示医薬品をいまだに検査もせずに処方している動物病院があるという話を令和のこの時代になっても聞きます。とても悲しいことです。当院は理にかなった獣医療を提供することをモットーにしています。大切な家族を守るためにフィラリアの感染の有無のチェックは毎年、予防開始時に行いましょう。


予防の季節、始まりました!!

さて、2016年度が始まりました。

入社式や入学式の季節ですね?

桜も咲き、当院周辺では先週末が桜の花のピーク。

自分も桜を見学に病院の診療終了後に『流川』まで行ってまいりました。



川沿いに桜の木が多数あり、ライトアップもされていて見事なものでした。

昨年も行ってきたのですが、本当に『流川』の桜は素晴らしい。

さて、話をタイトルに戻します。

春といえば『予防』の季節です。

フィラリア予防、狂犬病予防(ワンちゃんのみ)、ノミ・マダニの予防。

ワンちゃん、ネコちゃんとっても大切な予防ですね?

予防で防げる病気は罹ると命に関わる病気がほとんどです。

当院でも予防目的で来院する方が4月に入り増えました。しっかり予防し、今年も良いペットライフをおくっていただきたいものです。


油断ならない歯の病気

さて、先日より、歯周炎にて根尖部膿瘍(歯の根っこに炎症が出て、膿が貯まる病気)を起こしているワンちゃんの歯科処置が続きました。。。

根尖部膿瘍を起こすと外観はこのような感じになります。

目の下の部分から膿が出てきているのが確認できると思います。
このような変化はある日突然出てきます。このワンちゃんの場合もそうでした。
レントゲン検査などを行い根尖部膿瘍を伴う歯周病だということが判明し、早速、歯科処置。。。
酷く歯周病が進行していた場合は大抵、抜歯を行わなくてはなりません。
実際、処置を行ってみると。。。

一部、歯石をとった部分がありますが、茶色く石みたいに歯にくっついているのが歯石です。
この歯石の影響で、歯肉に慢性的な炎症が起こり歯槽骨の融解がひどくなっていました。

歯周炎が酷く根尖部膿瘍を今後起こしそうな部分の抜歯も行い、抜歯部分の穴を周囲の組織を用いて縫合しました。


膿瘍になっている部分も洗浄し綺麗にしました。


結構時間もかかったのですが、無事終了。

歯周病になっちゃうとワンちゃんも口が痛いし、飼い主さんの負担もかかり何一つ良いことはありません。やはり、歯石の付着が目立ち始めたなぁと思う頃に歯石の除去処置を行うのが一番です。

子犬の頃から歯磨きなどの習慣を付けておき、ウェットのフードよりはドライフードのほうが歯石も付きづらいので、そのような対策も必要ですね。

当院ではパピークラスを開催して、歯磨きのことなども子犬を飼われ始めた飼い主様にレクチャーしています。

もし、ご興味を持たれた飼い主様がおられましたら一度ご参加されてみてください。

詳しくはコチラを御覧ください。

また、ご自分のワンちゃんに歯石が結構付いているなぁと感じた場合も、ご来院いただき御相談
くださればと思います。


フィラリア症について2

当院では心臓の検査を行い『肺高血圧症の程度』や『フィラリア成虫の寄生数』を調べ、駆除に関するリスクに同意を得られた場合に駆虫を行っています。
駆虫を施す事により肺高血圧の進行を抑える事が目的です。

先週は2頭のワンちゃんの駆虫プログラムを開始しました。
フィラリアが寄生しているワンちゃんは一度心臓の検査を受けられてみることをお勧めいたします。放置するとフィラリア症は悪化の一途をたどります。

【フィラリアが寄生しているワンちゃんの胸部レントゲン】


【エコー検査にて主肺動脈内にフィラリアが認められます。1】


【エコー検査にて主肺動脈内にフィラリアが認められます。2】


フィラリア症について1

さて、今回はフィラリア症についてです。
以前にも何度かブログに書いたこともありますが、今回も書きます
なぜ書くかというと、やはり当院の周辺の地域は野生動物なども多くフィラリア予防していないワンちゃんはフィラリアに感染するリスクが相当高い地域だからです。
極端な話、フィラリア予防を1ヶ月忘れただけでも感染してしまったワンちゃんもいます。。。

犬のフィラリア症というのはどういった病気か?ということを今一度皆様に理解していただこうと思います。

まず、フィラリア症の理解のためには心臓の血液の流れを知る必要がありますので、そちらから簡単に話をしていきます。

心臓には4つの部屋があります。右心房、右心室、左心房、左心室です。体で使われた血液はまず最初に右心房に入ります。それから右心室に入り肺動脈という血管に血液を送って肺に流れます。肺で酸素化された血液は左心房から左心室に入り全身へ送られます。

フィラリアが好んで寄生する場所は『肺動脈』という血管の中です。
(飼い主様の大半の方はフィラリアは心臓に寄生する寄生虫だと思っている方が多いようですが。。。)
肺動脈にフィラリアが寄生するとそこで肺動脈の炎症や血栓などができていきます。すると肺動脈の血液の流れが悪くなり、肺動脈内の血圧が上がります。これを『肺高血圧症』といいます。『肺高血圧症』がひどくなると右心室に負担がかかります。そして、右心不全を起こすと『腹水』や『胸水』が貯まるようになります。
また、肺動脈に血液が入りにくくなっているため左心房に入る血液量が少なくなります。そうすると全身に流れる血液量が少なくなりいろんな症状が出てきます。(興奮時の失神、循環不全による腎不全など)
この病態がいわゆる『フィラリア症』です。『フィラリア症』というのは『肺高血圧症』の1つの要因です。

『肺高血圧症』というのは人の医療でも原因によりますが難治性の病態です。ひどくなると予後をかなり悪化させます。
(その2に続く)


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